サマータイムマシンブルース

 

 

 

モラトリアムを謳歌している大学生たち。

彼らが突如、タイムマシンに出会ったことではじまる、

大げさじゃないSFコメディ。

以下、ネタバレはほぼ無し。

 

以前、本広監督が何かの本の対談でしていた

「最もしたいことができた映画」といった旨の話が

印象に残っていたことが、アマゾンプライムのスクロールで手を止めた理由だ。

そのとき、彼の話で対比されていたのは、踊る大捜査線のシリーズだった。

 

巧みな脚本で楽しめた。

原作はヨーロッパ企画という劇団の作品。

演劇が原作の「キサラギ」や「ラヂオの時間」などは好きなので、

おそらく好みだろうと思って観たが、やはり好みだった。

 

序盤は正直退屈に思ってしまったのと、軽いノリがきつかったが、

中盤以降、どんどん出来事が連鎖していくあたりからひきこまれた。

まるで、方程式を解いていくような印象がある。

 

冷静に考えればタイムトラベルものにありがちな矛盾もある気がするのだが、

それはあっけらかんとした、勢いのある演技や演出のテンポ感で気にさせないようにしている。

そう考えると、少しアホっぽい大学サークル員たちという登場人物の設定は、よくできている。

さらにいえば、そんな設定が、決してタイムマシンを大それたこと

(金儲けや権力の掌握・・・)などに使わないという、話のスケール感の制御にも

つながっている。なるほどと思う。

 

出演者は、今観ると豪華。

瑛太上野樹里が主演級だが、ムロツヨシ真木よう子も目立つ脇役で活躍している。

(どれくらい本気か不明なものの)続編の計画もあるそうだが、

この出演者たちをもう一度集めるのはなかなかヘビーだろう。

 

この映画では、若手だった彼らの、一夏のきらめきが観れる。

写真が印象的なモチーフになっているのだが、これは、

その「きらめき」を強調する役割を果たしているようにも見える。

あとから振り返ると貴重な瞬間を閉じ込めるタイムカプセルのような、写真という存在。

そう考えると、バカバカしくて騒々しいのに、どこか儚さを称えた映画なような気もする。

 

  

 

曲がれ!スプーン

曲がれ!スプーン

 

 

 

幕が上がる

幕が上がる

 

 

この監督の、他の演劇関連の作品も機会があれば観てみよう。