摩滅と消耗。繰り返される痛み。


駅からの帰り道はいつも俯いている。駅前でたむろしている青年たちの声だけが空気をふるわす。
私はいつも真っ暗なアパートの階段を貧相な蛍光灯を頼りに上る。そのころから私は仮面に手を伸ばす。
鈍重なアパートのドアを開けると同時に、私は片手で仮面を剥ぎ取る。べりべりべりべり、という音が廊下まで聞こえそうだ。
グローランプの明滅の後、私は、笑顔を凝固させて定着させた仮面を見る。今日の分の笑顔。
その仮面は、くしゃくしゃに丸めても、一日かけて癖がついたために、扁平に広がり形を保とうとする。
私はいつもそうしているように、大きなゴミ袋に投げ込む。そうして、私の顔は表情をなくす。
少しずつ仮面として切り取られて、私の顔は限界に近づいている。皮膚が薄くなり、表情筋が損なわれてい。
仮面を脱ぎ捨てた私の顔はどこまでも青白い。