君と僕。 (1) (ガンガンコミックス (0602))

君と僕。 (1) (ガンガンコミックス (0602))

高校生たちの幸福な青春を描いた漫画。おそらく、私のようにたいしたことのない青春を過ごした大人たちにとってはすばらしくトラウマを刺激してくれるはずだ。だがそんな痛みを感じつつも賞賛すべき漫画だと思う。強靭な信頼感に支えられた世界観を、読み手に肯定させるだけの力がある。

ところで、この作品は二つの意味でフィクションであることを強調すべきだろう。
第一に、男性の世界を女性が描いている意味でのフィクションである。女性の視点からみて理想化された男子高校生が登場人物である。容姿も性格もカッコいい。また彼らの憎まれ口は生々しさを感じさせない程度に穏やかである。その穏やかさは、女性的といっていい。彼らのやりとりは、女性が遠めから眺めて憧れを感じるような種類のものだ。

第二に、青春時代を通り過ぎた作者が青春時代を描いている意味でのフィクションである。ときどき作者の言葉として折り込まれるのが、青春時代が「いかに特別であり貴重か」を語る言葉たちだ。こうした回顧的な視点を通して、どこか遠い世界としての距離感を登場人物の済む世界へと感じることになる。その距離感の分だけ、物語は輝度を供給される。

いってしまえば二重の理想化が施されている。とはいってもそんな世界が読者へ親密に開示されるところに、不愉快な青春を送った者を刺激する要素があるのだけれど。